自閉症と正常の境

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「自閉症の心の世界」   星和書店
 フランチェスカ・ハッペ

     

日本では専門医以外の医者、例えば小児科医であったり他の科目の医者が、
「自閉症スペクトラムが普通の人に繋がっている」と明らかな誤解をしている例が見受けられますが、
英国でも研究者として同じ悩みがある様です。

    

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ハッペは、ここで
自閉症」は正常な連続体の一端位置していない。とハッキリ明示しています。

     

     

日本では専門家で(他にもいるかも知れませんが)、杉山登志朗医師と辻井教授だけが、自閉症グレーゾーンが存在すると主張しています。

     

(福井大学医学部付属病院では杉山登志朗医師を児童青年期こころの専門医育成部門 担当教官として受け入れていますから、「連合小児発達学研究科」を構成する 大阪大学 金沢大学 浜松医科大学 千葉大学 福井大学系の精神科医、中でも児童精神科専門医はICD-10厚労省の基準とは異なる独自の見方主張をしているのかもしれません。)

       

     

数少ない情報の中から、その根拠らしきモノを見出すなら、この文章が見つかります。

      

ウイングの本の250ページ。
ただこの文章は英国流の言い回しがあり、分かりにくい日本語なのでくせ者です。

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自閉性障害として特徴づけられる特性の多くは、生活のあらゆる面で間題なく過ごしている人にもわずかながらみられることがあります。

ほとんどの人はそのパーソナリティのなかに、自閉的行動となんらかの共通性をもつ側面が、一つないしそれ以上見られるものです。

アスペルガーが指摘しているように、ある程度の自閉性は、芸術や科学の領域においては有利となります。

P250 正常との境

       

  1. 自閉性が見られる人でも、問題無く生活している人がいる。

かつての私がそうでしたが、残念ながら経済的成功に至らず、満足出来る生活環境を整えるまでには行きませんでした。しかし、私たちの仲間には、経済的成功者が存在し、生涯を全うできる人もいます。

     


自閉性障害をもつ能力の高い人と、正常だがちょと変わった人との間には、 明確な境界線は存在しません。

診断の問題の論議のなかで、どこに線を引くべきかということがしばしば討議されます。

診断を下すことによって、だれかを傷つけたり、以前になかった問題を引き起こす危険性はないのでしょうか。

この問いは、実践上のジレンマではなく理論上のジレンマです。

P250 正常との境

     

  1. 現在自閉性障害の明確な境界線を設けていない。それは理論上のジレンマがあるからだ。

理論上のジレンマとはどの様な事でしょう。

自閉症か否かは既に「心の理論」等で定義されている。しかし、問題無く生活している人まで含め強制的に判定する事に繋がらないか。判定する事で、かつてのユダヤの様に排除の対象になったり、判定された事で、例えば社会制度上で逆差別の対象にならないか。これらの可能性を考えると、理論上のジレンマが生じる。  と言う事です。

   


臨床においては、自閉性障害の診断をする最も重要な理由は、個々の問題が幼年期から成人期までの発達上の難問を引き起こすからですし、また親たちや自閉性障害をもつ人自身がしばしば助けを必要としているからです。

そうした場合、診断を下すためには、その診断によってどのような助言が得られるかを検討するのが適切です。

よく対処している人は、たとえ自閉的特徴をたくさんもっていたとしても、診断を受けに行くよう紹介されたり、自分からすすんで診断を受けたりはしません。

彼らにそうすべきだと助言することは、不当な干渉です。

自分が自閉性障害をもつことに気づいており、そして相互に連絡を取りあっている非常に能力の高い人のグループは、いろいろな刊行物のなかで、自分たちの考え方やその世界の経験のしかたは、自分たちにとって正当なものであること、そしてたとえ治療が可能だとしても、自分たちはそれを望んでいないことを強く主張しています。

しかし自閉性障害だと気づいている人がすべて、必ずしもこのように感じているわけではなく、たとえ表面的にうまく対処していても助けを求めています。ひとりひとりの感じ方や願望は、尊重すべきです。     

P250 正常との境

      

  1. ひとりひとりの感じ方や願望は、尊重すべきである。

     


     

「正常との境」ウイングの言わんとする結論はこうです。

    

  1. 自閉性が見られる人でも、問題無く生活している人がいる。
  2. 現在自閉性障害の明確な境界線を設けていない。それは理論上のジレンマがあるからだ。
  3. ひとりひとりの感じ方や願望は、尊重すべきである。

     

      

走り読みをすれば何となく変な人と自閉症の間がずっと続いている様に感じるかも知れませんが、よく読み込むと、自閉症のグレーゾーンが存在するなどとは一切書いていない事が分かると思います。

     

ではもう一度この部分をよく読んで見て下さい。          

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